新刊新書の「定年後」バトル 1
新聞を広げて新刊本の広告を眺めていると、高齢者向けのハウツー物がつぎつぎ出ているのに気づく。ここ2、3週間でも「おひとりさまの豊かな老後」「一流の老人」「老人の取り扱い説明書」「認知症にならない『脳活性ノート』」「老後はひとり暮らしが幸せ」」「孤独のすすめ」、年齢を刻んだ「人生は70歳からが一番面白い」「はじめての八十歳」「百歳人生を生きるヒント」「100歳の生きじたく」、さらには「死に支度」や「身近な人が亡くなられた後の手続きのすべて」なんてのまである。
かつてどの国も経験したことのない超高齢化社会を迎えた日本で本を売ろうと思えば、こうなるのももっともだが、団塊の世代が定年を迎え、前期高齢者にすっぽりとはまったタイミングが、いっそう勢いをつけている。世代ボリュームが社会に与える影響は大きい。団塊の世代は、そう名づけられてからずっと世相を形作り続けてきた。
私は、できれば死ぬまで仕事を続けるつもりでいたが、頭も体もすこしずつ弱ってくるとそうも行かくなる、と最近になって感じるようになった。さてそうなると、5年も10年も前にリタイアした同年代の人たちが、どんなふうに暮らし、どんな問題を抱えているのか知りたくて発刊3カ月で12版を重ねた新書「定年後」(中公新書刊。楠木新著)を読んでみた。
プロローグからいきなり驚く。手回しのよい会社では、社員が50代になると定年後に向けてライフプラン研修を開くのだそうだ。その内容がどのセミナーでも①受け取る年金額をきちんと計算して老後の試算を管理すること②今後長く暮らすことになる配偶者と良好な関係を築くこと③これから老年期に入るので自分の体調面、健康にも充分留意すること④退職後は自由な時間が生まれるので趣味を持たないといけない―とおおむね決まっているらしい。
ところがそううまくいくかというと、現実には充実の老後というにはほど遠く、こんな指摘も引用している。「とにかく朝起きて夜寝るまで何もやることがない。友達もいない。電話をかける相手もいない。これでは生きていることがむなしくて仕方がなくなる。それはある意味、死ぬほどつらいことですよ。(中略)むなしくて病気になるのです」
会社人間が準備もなく会社を辞めると、社会から孤立し居場所さえ失ってしまう。図書館やショッピングセンター、ひとりカラオケで暇つぶしをするのでなく、生きがいのある輝く第2の人生を築くには、資産管理、雇用延長や転身、健康維持、人づき合い、社会貢献、居場所探し、あれやこれやを……というわけだ。
そういうもんかと読み終わったら、数日後の新聞の新刊広告で「定年バカ」(SB新書。勢古浩爾著)が目についた。身もフタもない書名も書名だが、そのオビに「ベストセラー『定年後』に影響されて、充実した定年後にしなきゃと急かされない!」とキャッチコピーがある。こんなにストレートに名指しで反論をぶつけた本も珍しい。これはどうしても読んでみたくなる。(つづく)
かつてどの国も経験したことのない超高齢化社会を迎えた日本で本を売ろうと思えば、こうなるのももっともだが、団塊の世代が定年を迎え、前期高齢者にすっぽりとはまったタイミングが、いっそう勢いをつけている。世代ボリュームが社会に与える影響は大きい。団塊の世代は、そう名づけられてからずっと世相を形作り続けてきた。
私は、できれば死ぬまで仕事を続けるつもりでいたが、頭も体もすこしずつ弱ってくるとそうも行かくなる、と最近になって感じるようになった。さてそうなると、5年も10年も前にリタイアした同年代の人たちが、どんなふうに暮らし、どんな問題を抱えているのか知りたくて発刊3カ月で12版を重ねた新書「定年後」(中公新書刊。楠木新著)を読んでみた。
プロローグからいきなり驚く。手回しのよい会社では、社員が50代になると定年後に向けてライフプラン研修を開くのだそうだ。その内容がどのセミナーでも①受け取る年金額をきちんと計算して老後の試算を管理すること②今後長く暮らすことになる配偶者と良好な関係を築くこと③これから老年期に入るので自分の体調面、健康にも充分留意すること④退職後は自由な時間が生まれるので趣味を持たないといけない―とおおむね決まっているらしい。
ところがそううまくいくかというと、現実には充実の老後というにはほど遠く、こんな指摘も引用している。「とにかく朝起きて夜寝るまで何もやることがない。友達もいない。電話をかける相手もいない。これでは生きていることがむなしくて仕方がなくなる。それはある意味、死ぬほどつらいことですよ。(中略)むなしくて病気になるのです」
会社人間が準備もなく会社を辞めると、社会から孤立し居場所さえ失ってしまう。図書館やショッピングセンター、ひとりカラオケで暇つぶしをするのでなく、生きがいのある輝く第2の人生を築くには、資産管理、雇用延長や転身、健康維持、人づき合い、社会貢献、居場所探し、あれやこれやを……というわけだ。
そういうもんかと読み終わったら、数日後の新聞の新刊広告で「定年バカ」(SB新書。勢古浩爾著)が目についた。身もフタもない書名も書名だが、そのオビに「ベストセラー『定年後』に影響されて、充実した定年後にしなきゃと急かされない!」とキャッチコピーがある。こんなにストレートに名指しで反論をぶつけた本も珍しい。これはどうしても読んでみたくなる。(つづく)